特定技能ビザと技能実習ビザ、どちらを選択すべき?

特定技能と技能実習の比較①:制度の目的

 

アルファサポート行政書士事務所は外国人技能実習を事業のひとつとしている事業協同組合の設立を複数お手伝いしてきた関係で、事業協同組合や技能実習実施企業とのお付き合いがありますが、皆さんの特定技能ビザへの関心は非常に高いものがあり、ご質問も多くいただきます。

事業協同組合さんの中には、特定活動ビザの誕生は、事業の死活問題であると捉えているところもあります。

 

そもそも技能実習制度は「国際貢献」を目的とした制度であり、日本の優れた技術を身につけていただいて、母国の産業発展に活かしてもらうことを目的としており、それ以上でもそれ以下でもありません。本来は労働力として期待するには無理がありすぎる制度です。

 

また事業協同組合設立も、設立した初年度は外国人技能実習事業を行うことができず、定款にうたうことすらできないという大変高いハードルが課されています。

 

しかしながら、外国人技能実習生を受け入れている企業の規模は、2017年のJITCO統計では10人未満が50.4%、10~19人が15.6%、20~49人が15.3%となっており、

技能実習生受入企業の実に66%が従業員19人以下の中小零細企業で、本音のところでは「国際貢献」よりも「人手不足の解消」としてこの制度を使ってきた現実があります。

 

いっぽう特定技能ビザは、初めからストレートに日本の人手不足の解消を目的としています。国際貢献という相手国ファーストの制度ではなく、日本ファーストの制度であるとも言えるでしょう。

 

 

特定技能と技能実習の比較②:受入国

 

技能実習に詳しくない行政書士さんを含め一般にあまり知られていない事実ですが、技能実習生の受入国は2018年11月1日時点で15か国に限られています。

技能実習は「国際貢献」のしくみなので、日本国と相手国との国家間の取り決めが必要で、取り決めが無い国からは技能実習生を呼ぶことはできません。

 

現在、技能実習生として迎えることができる可能性がある国は、インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ペルー、ミャンマー、モンゴル、ラオスです。

 

以前、知り合いの建設業者様から「カザフスタンから技能実習生を受け入れたい」とのご相談を受けたことがあります。

ウズベキスタンからは可能性がありますが、カザフスタンは上記15か国に含まれていないので当時呼ぶことはできませんでした。

しかし今後は、カザフスタン人も(理論上は)特定技能ビザで招へいすることができるようになります。特定技能ビザは就労ビザなので、外国人の国籍は問わないのです。

 

【追記】政府は在留資格「特定技能1号」を取得するために合格することが必須である日本語試験を、国際交流基金主催のもと当初8か国(ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジア、残り1か国は調整中。)で行なうこととしています。したがって、理論上はともかく事実上は、海外から招聘する外国人労働者の国籍は当面はこの8か国が中心となります。政府は特定技能ビザ取得のために合格することが必要な日本語試験を、この国際交流基金主催の日本語試験に限らない方針です。また、試験実施国は順次その他の国にも拡大していく方針とされています(2018年12月12日)。

 

但し、イラン、トルコなど日本からの退去強制者の受け入れを拒む一部の国からは招聘することができない予定です。

この措置は、特定技能ビザで入国した外国人が日本で犯罪を犯すなどして退去強制処分になっても、相手国が受け入れを拒否する方針を明らかにしている場合、いつまでも日本に留まることとなるため不都合であるからと考えられます。

 

さらに不法滞在者が多い国の出身者についても、門前払いはしないものの、ビザ審査を厳格にするとの方針のようですから、この点には気をつける必要があります。

法務省のデータによれば、2018年1月1日現在の不法滞在者数の上位10か国は、韓国、中国、タイ、ベトナム、フィリピン、台湾、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブラジルです。

この措置は、特定技能ビザ1号は最長でも5年しか日本に滞在できないところ、5年の期間満了後も本国に帰国せず、そのまま不法残留となる可能性を憂慮してのことと思われます。

 

 

特定技能と技能実習の比較③:スキーム

 

特定技能ビザは就労ビザですから、外国人労働者と受入企業だけがスキームを構成します。この両者のあいだで雇用契約が成立すれば、最低限の条件が整います。

外国人の生活を支援するために登録支援機関という組織を使うこともできますが、利用は任意です(受入企業が自社で行っても構いません)。

受入企業は誰かにお膳立てしてもらうことはできませんが、出入国在留管理局への特定活動ビザ申請も自社で行うこととなり、自らが主体的に行動できるスキームと言えます。

 

いっぽう、技能実習は5当事者が登場する非常に複雑な制度です。全体の96.6%を占める団体監理型の場合、まず相手国の送出機関(帰国後に働く会社)と事業協同組合が契約を結び、その契約に受入企業と技能実習生が乗っかる仕組みです。ですから、受入企業が自らコントロールできる幅はおのずと限界があり、出入国在留管理局(旧入国管理局)への技能実習ビザの申請も、受入企業ではなく事業協同組合が行ないます。そしてさらに、外国人技能実習機構が技能実習計画の認定などを通じて、受入企業や事業協同組合をチェックする体制になっています。

 

組合費を支払えばあとは事業協同組合がお膳立てしくれる制度とも言えますが、受入企業が自ら動いて決定できる裁量の幅は非常に小さいと言えるでしょう。いちいち技能実習生との間に、事業協同組合をかませないといけないからです。

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